ポートレート撮影|バストアップのポージング完全ガイド

バストアップポージングがうまくいかないと感じているカメラマンや被写体は、非常に多いのではないでしょうか。「気合いを入れて撮ったのに、毎回同じ写真になってしまう」「どんなポーズをとればいいか、言葉で伝えられない …」といった悩みは、ポートレート撮影でよくある壁です。

この記事では、カメラマンと被写体の両方の視点から、バストアップ撮影のポージングのつくり方と指示の出し方をセットで解説します。読み終えるころには、自然で魅力的なバリエーションを自由につくれるようになるでしょう。

この記事でわかること
  • バストアップが単調になる原因と解決の3軸

  • よりすっきりと見せたい場合の角度・首・肩のルール

  • うずらの卵を握る手の形と、定番6箇所の添え方

  • 被写体を自然に動かす言葉がけのコツ

  • 印象別ポーズ分類・体型別・スマホ撮影それぞれの調整ポイント

バストアップが単調になる3つの原因と、今すぐ使える解決策

見本のポーズ集を見る前に、まず「なぜ毎回同じ雰囲気の写真になってしまうのか」を整理することで、解決策につながります。

単調になる3つの原因

ひとつめは、顔だけに意識が集中していることです。
表情ばかり気にして、肩や首、手が放置されてしまいがちですが、バストアップは顔から胸もとまでが写るため、首や手の位置や見え方も写真の印象を大きく左右します。

ふたつめは、「正面向きが無難」という思い込みです。
正面向きの撮影は体が平面的になり、横幅が強調されやすくなってしまいます。少し角度を変えるだけで印象は大きく変わるため、ぜひ意識的に斜めの向きも取り入れてみてください。

3つめは、ポーズを「静止した形」だと捉えていることです。
静止しようとするほど筋肉が硬直し、表情までぎこちなくなります。

これら3つの原因は、それぞれ以下の3軸で解決できます。

ポイント
  • 角度:体と顔の向きで立体感と細見えをつくる

  • 手:指の形と添える場所でバリエーションを増やす

  • 流れ・ディレクション:自然な動きの一部分を切り取るように撮る

正面向きで平面的に見える例
正面向きは奥行きが出ず、平面的な印象になる
斜め30度で立体的に見える例
斜め30度にすると立体感が生まれる

斜め30度が正解|顔・首・肩の角度で細く見せる5つのルール

「太って見えるのは体型のせい」と思ってしまいがちですが、実は、写真に写る角度の影響が大きい場合があります。

体をカメラの正面に向けると、肩幅も顔幅もそのまま写るため、写る体の面積が増え、横に広く見えやすくなります。
解決策として、体を斜めにするだけで奥行きが生まれ、すらりとした立体的な印象になるため、左右20〜30度ほどの斜めの向きを取り入れることが推奨されています。これは、ポートレート撮影を専門とするカメラマンの間でも広く知られている基本技法です。

また、焦点距離も仕上がりに影響します。広角寄りのレンズは顔の歪みが出やすいため、ポートレートには85mm前後の中望遠レンズが定番です。
絞りを開けて背景ぼけをつくると、被写体が際立ち、構図全体に奥行きが生まれます。

首を長く見せたいとき、多くの人は「顎を引く」ポーズをとりがちですが、これだと首が縮んで見えてしまいます。
撮影時には、首を前に長く伸ばしてから、顎を少し下げる動作を取り入れてみてください。このちょっとしたコツで、首のラインがすっと伸び、長く見せることにつながります。

ピント合わせにも鉄則があり、斜め向きの場合は、カメラに近い側の目に合わせましょう。近い側の目がぼけると、顔全体がぼやけて見えてしまいます。

補足

カメラマンは「肩の力を抜いて、片方を少し後ろに引いてみて」と声をかけてみましょう。被写体の肩のラインが自然に下がり、首まわりがすっきり見えます。

顎を引いただけの首
顎を引くだけでは首にしわが寄りやすい
首を前に伸ばしてから顎を下げた首
首を伸ばしてから顎を引くと首元がすっきりする

手と指の使い方|うずらの卵を握るイメージで上品に見せるコツ

手は写真の印象を左右する重要なパーツです。手もとに力が入ると、それだけで写真全体の印象が硬くなってしまいます。

基本の形は、うずらの卵を軽く握り、人差し指だけを軽く伸ばしたやわらかな曲線です。手のひらに小さな卵を包むイメージを持つと、指先まで自然なカーブが生まれます。被写体には「手の中に小さな卵があると思って、ふわっと握ってみて」と言葉で伝えると伝わりやすくなります。

反対に、指をピンと伸ばしすぎるポーズは避けましょう。緊張感が出て、ぎこちなく見えてしまいます。撮る側は「指の力を少し抜いてみようか」と、やわらかく声をかけるとよいでしょう。

また、手の側面を見せたり、手首を内側に少し返したりするだけでも、写真の印象は大きく変わります。上品でやわらかな雰囲気を演出するためにも、手の角度に少し変化を加えてみましょう。

注意

顔まわりに手を置くときは、輪郭を隠しすぎないように配慮しましょう。あくまで「添える」程度にとどめ、表情がしっかり見えるバランスを保つことが大切です。

うずらの卵を握る自然な指の形
うずらの卵を握るような力加減が自然に見える
力みすぎてぎこちない指の形
力みすぎた指先は不自然な印象になる

手を添える定番6箇所|雰囲気を自在に変える方法

手を添える場所を変えるだけで、写真の雰囲気はガラッと変わります。定番は、頬・顎・髪・耳・胸もと・首筋の6箇所です。

添える場所

与える印象

頬

可憐でやわらかな印象

顎

思慮深さと落ち着き

髪を触る

自然な動きと抜け感

耳にかける

さわやかさや軽やかさ

首筋に触れる

知的で洗練された印象と縦ラインの強調

胸もと

上品さと穏やかさ

たとえば、頬や顎に軽く触れると、可憐でやわらかな印象になります。
被写体が自然にポーズがとれるように、カメラマンは「考えごとをするみたいに、顎にそっと触れてみて」と言葉で伝えたり、お手本の動作を見せてみましょう。

髪を耳にかける仕草は、自然な動きと抜け感が出る定番のポーズです。首筋に触れると縦のラインが強調されて、知的で洗練された雰囲気になり、胸もとに手を添えると、上品で穏やかな印象に仕上がります。

同じ斜め30度の角度でも、手を添える場所を変えるだけで6パターンのバリエーションをつくれます。

頬に添えた可愛い印象
頬に添えた可愛い印象
首筋に触れた知的な印象
首筋に手を添えると知的な雰囲気になる
胸元に添えた上品な印象
胸元に添えた上品な印象

ポーズは「形」より「流れ」|自然な動きから表情を引き出す撮り方

ここが、この記事でみなさんにもっとも伝えたい考え方です。ポーズは「形」ではなく「動きの途中」を止めるものと捉えてみてください。

撮影中に「このまま静止してください」と指示すると、筋肉が硬直してぎこちなくなってしまい、同じポーズを長くキープすればするほど、表情まで固まってしまいがちです。

そこで、自然な動作の途中でシャッターチャンスを狙ってみましょう。
たとえば、髪をかき上げる途中や振り向く瞬間を連写で捉えるのです。被写体には「髪をゆっくりかき上げてみて」と動きで指示し、カメラマンはその流れの中でシャッターを切り続けます。

大切なのは、同じポーズを続けないことです。長時間の撮影になるときは、一度ポーズをリセットして体を動かし直すルーティンをはさむとよいでしょう。動くことで肩の力が抜け、表情も自然にほぐれていきます。

まとめ
  • 「止まって」ではなく「自然に動いてもらって、その瞬間をシャッターで切り取る」

  • 髪をかき上げる、振り向く、歩き出すなど、動作の途中を連写で狙う

  • こまめにリセットして表情と体の緊張を防ぐ

静止して表情が固いポーズ
静止して表情が固いポーズ
振り向く動作の途中で撮った自然な表情
振り向く動作の途中で撮った自然な表情

緊張をほぐす言葉がけ|NGとOKの言い換え集4選

撮る側のディレクションは、写真の出来を左右する非常に重要な要素です。

よくやってしまいがちなのは「可愛くして」「いい感じにして」といった抽象的な指示で、これでは被写体は何をすればいいかわからず、かえって体が固まってしまいがちです。言葉で具体的に動作を伝えることがポイントとなりますので、以下のように言い換えてみましょう。

NG指示

OK指示

可愛くして

手で髪をそっと触ってみて

自然な感じで

窓のほう、遠くを見てみて

笑って

3つ数えたら息を吐いてみて

顔をすっきり見せて

首を前に伸ばして、顎を少し下げて

緊張をほぐすには、テンポのよい声かけも効果的です。「いいですね」「その表情とても素敵です」と途中で声を返すと、被写体は安心して動きやすくなります。言葉で伝わりにくいときは、カメラマン自身がお手本のポーズを見せる非言語のディレクションも有効です。

カメラマンが被写体に動作で指示を出している撮影現場の様子
カメラマンが被写体に動作で指示を出している撮影現場の様子

撮りたい印象から逆算|仕上がりイメージ別ポーズ分類4パターン

ポーズ選びに迷ったときは、「どんな印象の写真にしたいか」を起点に逆算すると選びやすくなります。大きく4つの雰囲気をベースに分類してみましょう。

印象

角度・視線

手の位置

表情・ポイント

可憐でやわらかな印象

斜め20〜30度、視線をやや外す

頬・顎に軽く添える

口角を軽くあげ、ふんわりとした雰囲気

知的でシャープな印象

斜め30度前後、視線はまっすぐカメラへ

首筋に触れる

口を閉じてすっきりと、縦ラインを強調

上品さと落ち着き

斜め20度、視線をやや下げる

胸もとに軽く添える

肩の力を抜いて穏やかに

自然で抜け感のある印象

斜め20〜30度、振り向く途中

髪を触る・耳にかける動作中

動きの途中を連写で捉える

たとえば「知的でシャープな印象」をつくりたい場合は、体を斜め30度に向け、視線をまっすぐカメラに向けて、首筋に手を添えます。反対に「自然で親しみやすい印象」にしたい場合は、髪を触る動作の途中を連写で捉えてみましょう。

補足

ひとつの撮影セッションでふたつ以上の印象を撮っておくと、後から用途に応じて選べるため非常に便利です。

知的・クールな印象のポーズ例(首筋に手・視線まっすぐ)
知的・クールな印象のポーズ例(首筋に手・視線まっすぐ)
自然・抜け感のある印象のポーズ例(髪を触る動作の途中)
自然・抜け感のある印象のポーズ例(髪を触る動作の途中)

体型別の調整ポイント|それぞれの魅力を引き出す撮り方

写真に写ったときの印象は、人によってさまざまです。それぞれの魅力を引き出す調整のコツを知っておくと、被写体にも心から喜んでもらえます。

女性|若々しくすっきりとした印象をつくる角度と手の置き方

顔をすっきり見せたい場合は、手で輪郭に沿ってラインをつくると効果的です。頬の横に軽く手を添えるだけで、縦のラインが強調されます。

肩幅が気になる場合は、体を斜めにする角度を深めにとりましょう。30度に近づけることで、肩の横幅が抑えられます。丸顔が気になる場合は首を伸ばして縦のラインを意識し、面長の場合は前髪を調整したり手を添えて縦の印象をやわらげると、バランスが整いやすくなります。

丸顔の縦ライン強調の角度
丸顔の縦ライン強調の角度
頬から顎に手を添えて面長の印象を和らげるバストアップ写真
面長のやわらげる手の置き方

男性|シャープで頼りがいのある印象と自然な表情をつくるふたつのアプローチ

男性の被写体の場合は、視線をまっすぐカメラに向け、顎を引かずに首をすっと伸ばしてみましょう。手は顎や首筋にそっと添えるか、自然に下ろした状態でも引き締まった雰囲気を演出することができ、斜め30度の角度と組み合わせることで、肩のラインが美しく際立ちます。

反対に、やわらかな雰囲気を出したいときは、視線を少し外して手を顔まわりに添えると、穏やかで親しみやすい印象になります。

斜め30度に体を開き視線をまっすぐ向ける男性のバストアップポーズ写真
男性被写体・視線まっすぐのシャープな印象
視線を外し頬に手を添えた男性のバストアップポートレート
男性被写体・視線を外したやわらかな印象
補足

「丸顔だから」「肩幅があるから」とネガティブに捉える必要はありません。角度と手の置き方で、ご自身の持つ本来の魅力を引き出す方向に調整していく感覚で楽しんでみてください。

スマホの自撮り|顔をすっきり写す3つのテクニックと注意点

スマホでの撮影や自撮りには、一眼レフとは異なる注意点があります。

もっとも気をつけたいのが、インカメラの歪みです。
顔の近くで撮影すると中心が大きく写り、不自然に膨らんで見えてしまうため、顔とスマホの距離を少し離して撮影しましょう。とアウトカメラを使い、セルフタイマーで撮影すると歪みが抑えられます。

さらに実用的なのが、スマホのポートレートモードの活用です。
ポートレートモードをオンにすると背景ぼけが生まれ、被写体が美しく際立ちます。また、多くのスマホカメラに搭載されている2倍ズームは、広角寄りの焦点距離からより望遠寄りへシフトする機能で、広角レンズで起きやすい「樽型の歪み」が出にくくなるため、顔の輪郭が自然に写ります。三脚を使って2倍ズームとポートレートモードを組み合わせると、自撮りでも仕上がりがぐっと変わります。

動いているところを撮影する場合は、セルフタイマーの連写機能が便利です。髪を触る動作や振り向く瞬間を、何枚か連続で撮ってみましょう。光は窓からの自然光を顔に当て、アングルはやや上から構えると顔まわりがよりすっきりとした印象になります。

手ブレが気になるときは、スマホを固定し三脚やイヤホンのリモートシャッターを使うと安定し、両手を自由に使ってポーズもとりやすくなります。

ポイント
  • ポートレートモードで背景ぼけをつくり、被写体を際立たせる

    2倍ズームを使うと広角の樽型歪みが軽減されて顔が自然に写る

    アウトカメラ・セルフタイマー・三脚の組み合わせが基本

スマホを近づけて歪んだ顔
スマホを近づけて歪んだ顔
少し離してアウトカメラ・2倍ズームで撮った自然な顔
少し離してアウトカメラ・2倍ズームで撮った自然な顔

よくある質問

斜め向きは左右どちらがおすすめですか?

人それぞれ写りのよい側があるため、両方を試してみてください。左右20〜30度の範囲で何枚か撮影し、被写体本人もカメラマンもしっくりくる側を選ぶとよいでしょう。利き顔という考え方もありますが、実際に撮りながら確認するのが確実です。

被写体が緊張して固まってしまうときはどうすればいいですか?

ポーズを固定せず、髪を触る動作や振り向く動作など、自然な動きを取り入れてみてください。動作の途中を連写で狙うと、自然な表情が撮りやすくなります。あわせて「いいですね」などテンポよく声をかけると、緊張がほぐれていきます。

手の置き場所に迷ったらどこがいいですか?

まずは頬や顎に軽く添えるところから始めるのがおすすめです。可憐でやわらかな印象になり、失敗しにくい定番のポーズです。慣れてきたら髪・耳・首筋・胸もとと場所を変え、印象の違いを楽しんでみてください。

スマホの自撮りで顔を細く見せるコツはありますか?

スマホをやや上から構え、顔から少し距離をとると、顔まわりがよりすっきりとした印象になります。インカメラは歪みが出やすいため、可能ならアウトカメラ・2倍ズーム・セルフタイマーを活用してください。首を前に伸ばして顎を少し下げると、首のラインも美しく見えます。

印象別にポーズを選ぶにはどうすればいいですか?

「どんな印象の写真にしたいか」を起点に逆算すると選びやすくなります。可憐でやわらかな印象なら頬に手を添えて視線を外し、知的な印象なら首筋に触れてまっすぐカメラを見る、といった組み合わせが基本です。詳しくは本文の印象別分類表をご参考ください。

まとめ|4要素の組み合わせで無限のバリエーションを

バストアップ撮影は、角度・手・流れ・ディレクションの4要素を組み合わせることで、いくらでもバリエーションがつくれます。

まずは斜め30度に体を向け、手を1箇所添えるだけの基本から試してみてください。それだけで、いつもとひと味違う一枚が撮れます。慣れてきたら、自然な動きの瞬間を捉える撮り方や言葉がけを足していきましょう。

さらに、印象別のポーズ分類を活用すると、「可憐」「知的」「自然」など撮りたいイメージから逆算してポーズを選べます。撮影前に目的のカットを決めておくと、セッションがよりスムーズに進むのでおすすめです。

なによりもカメラマンと被写体がコミュニケーションを楽しむことが、最高の一枚につながります。まずは次の撮影で、新しいポーズを追加するところから試してみてください。

まとめ
  • 正面より斜め20〜30度で、立体感とすっきりとした印象をつくる

  • 手はうずらの卵を握る形で、6箇所から場所を選ぶ

  • 固まるのではなく、動きの途中を止めて撮る

  • 抽象的な指示ではなく、動作で伝えるディレクションを心がける

  • 印象別の分類を活用して、仕上がりイメージから逆算する

← 白ホリでの撮り方の記事一覧へ

あわせて読みたい

RELATED